ホーム > 高齢者の賃貸借契約
古くから長期間にわたって入居している建物の中には、耐震性が低く老朽化が進んでいる建物もあります。このような建物は入居者にとっても危険性がありますし、賃貸人としても経済的な合理性にかなっているとは言いにくいので、入居者に立ち退いてもらって建物を取り壊すのが適切な場合があります。入居者が高齢者である場合にもこのような問題は生じます。この場合、高齢者の入居先探しが難しいことから、転居先探しに協力するなどの配慮が、円滑な建替え事業につながります。
≪老朽化した5階建てビルの一室について311万円の立退料の支払と引き換えに明渡を認めた例(東京地裁平成24年11月1日判決 D1-Law.com判例体系)≫
賃貸人 | 大手総合不動産会社 |
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賃借人 | ゴルフ会員権販売会社 |
建物 | 築50年以上、5階建、鉄筋コンクリートブロック造の4階部分1室 |
賃料 | 4万8,812円/月 |
共益費 | 7,350円/月 |
原告(賃貸人) | 立退料の提供 126万円 |
被告(入居会社) | 明渡を拒否 |
仮に立退きが認められるとしても立退料として借家権、通損補償に加えて開発利益配分約170万円、営業補償約1,733万円を要求
・竣工後50年以上を経ている
・老朽化が相当進行している(壁面に浮き、剥離。樋等の変形0、設備の老朽)
・構造耐震判定指標を下回っている部分がある
・コンクリートの中性化が進み鉄筋がさびやすい環境
・震度5以上の地震により中破する可能性が高く、大破も想定される
・震度7クラスの地震で大破の可能性高く、倒壊も想定される
・耐震補強には、耐震補強概算費用として1,300万円、保全回収概算費用として5,600~5,800万円かかる
・原告は周辺土地との一体開発を計画し、周りの建物は既に立ち退きが完了し取り壊されている
・本件建物は現在では、被告と1室を除き空き家を残すのみ
約311万円
根拠 借家権価格約372万円、通損補償額約63万円(工作物補償約21万円、動産移転補償約7万円、移転雑費補償約35万円)
このうち借家権価格の2/3と通損補償額の合計を立退料とする
≪老朽化した戸建て住宅について賃貸人の自己使用の必要性は何ら認められないとしつつ150万円の立退料の支払と引き換えに立ち退きを認めた例(東京地裁平成23年8月10日判決 判例秘書)≫
賃貸人 | 不動産購入会社 |
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賃借人 | 個人 |
建物 | 戸建て住宅(かつて居住していたが現在は倉庫に使用) |
賃料 | 2万5,000円/月 |
・原告は再開発を予定している業者に売却する予定で取得したもので自己使用は考えていないため、自己使用の必要性は認められない
・建物は遅くとも昭和16年には存在していた古い木造家屋
・1階に開口が多く、壁の位置が偏りひび割れあり、腐食やシロアリによる浸食あり、震度6強から7の地震により倒壊の恐れが極めて高い
・現在は洗濯機や自転車の置き場として使用している
・被告の自宅は近隣の自己所有土地建物