高齢者の賃貸借契約

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契約をするとき

定期建物賃貸借契約

新しく賃貸借契約を結ぶときに、定期建物賃貸借契約(定期借家契約)にするのは一つの選択です。
定期借家契約は契約期間が満了すれば契約が終了します。普通借家契約ですと期間が満了しても「正当事由」がなければ更新を拒絶できませんが、定期借家契約ではその心配はありません。契約が終了しても立ち退かない場合には裁判をせざるを得ませんが、定期建物賃貸借契約であれば容易に明渡判決が得られます。
この契約方式を使うことによって、賃貸借契約が長期化することによる各種のリスクを回避するとともに物件の計画的な利活用を行うことが可能です。

定期建物賃貸借契約の契約方法

①公正証書などの書面で契約すること(必ずしも公正証書である必要はありません)
②「更新がなく、期間の満了により終了する」ことをあらかじめ説明書面(38条2項書面)を交付して説明すること

契約内容

期間 任意の期間を定めること  1年未満の契約も有効
   (普通借家では1年未満の契約は期間を定めない契約とみなされます。)
更新不可 期間の満了により終了し契約の更新はできない
再契約 期間満了後、再契約することは可能

契約終了の手続

契約終了の1年から6か月前までの間に終了の通知を行うこと
※契約期間が1年以上の場合。契約期間が1年未満の場合は通知は不要。

普通借家から定期借家への切り替え

普通借家契約を終了させて、新しく定期借家契約にすることは可能
(普通借家契約は本来、正当事由がなければ契約期間が来ても終了させられないので、普通借家契約を終了させるには賃借人の同意が必要です)
ただし、平成12年3月1日より前に締結された居住用建物の場合は、当事者が合意しても切り替えはできない(「良質な賃貸住宅等の供給の促進に関する特別措置法」附則3条)

「定期賃貸住宅標準契約書」、38条2項書面、終了通知 (国土交通省)
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終身建物賃貸借契約とは

終身建物賃貸借契約は、賃借人が死亡すると自動的に賃貸借契約が終了するという契約です。高齢者が生涯同じ建物に住み続けられ、賃貸人としても契約が安定的に終了するので、賃貸人・賃借人の双方にメリットがあります。
(高齢者の居住の安定確保に関する法律 平成13年法律第26号)

終身建物賃貸借契約をするための要件

①都道府県知事の認可が必要です。(「事業認可申請書」と間取り図などの必要な添付書類を提出します。)
②賃借人は原則として60歳以上の高齢者に限ります。(同居人は妻、60歳以上の親族に限ります。)

終身建物賃貸借契約の概要

賃借人が終了したときに賃貸借契約は終了する。
居住のみを目的とする。
入居希望者から特に希望があった場合には、定期借家(契約期間があり更新がない)兼終身建物賃貸借(死亡によって終了)も可能
入居希望者から、仮入居したいという申し出があったときは、1年以内の定期借家契約で仮入居させること
同居者は高齢賃借人の死亡後1か月間で継続居住が可能
同居者は高齢賃借人の死亡後1か月以内に申し出れば自身で引き続き終身建物賃貸借契約ができる。

賃借人の要件

・60歳以上の単身の高齢者
・配偶者と同居する60歳以上の高齢者(配偶者は60歳未満でも可)
・60歳以上の親族と同居する60歳以上の高齢者
※高齢者の60歳未満の子は同居できない

貸主からの中途解約

知事の承認が必要(住宅の老朽・消滅等により維持に過分の費用が必要、賃借人が長期間不在で適正な管理が困難な場合に限る)

借主からの中途解約

原則として解約申入れから6か月後に終了
療養、老人ホームヘの入所、親族との同居等の理由の場合は解約申入れ後1カ月で終了できる。

認可基準

国土交通省令で定めるバリアフリー基準を満たすことが必要
床面積25㎡以上(原則)
新築の場合 段差、廊下の幅、浴室出入口幅、階段寸法、手すりその他
既存建物の場合 手すりその他

「終身建物賃貸借標準契約書」(国土交通省)
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東京都終身認可住宅一覧(令和2年3月30日現在) 50事業者
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契約終了後の残置物

賃借人が行方不明になったり、亡くなって相続人もいないというとき、建物明渡訴訟を起こしたり相続財産管理人の選任手続をとって、明渡を実現します。これには時間と費用がかかります。
賃貸借契約書に特約を追加して、このような法的な手続きをせずに済ませることができるでしょうか。裁判例にあった自力救済条項についてみてみます。

自力救済条項

裁判で次のような自力救済条項の有効性が問題となりました。
「賃借人は,本件貸室を1か月以上不在にする場合は,必ず賃貸人に通知する。その通知がなく,不在期間が1か月以上に及ぶ場合は,本件賃貸借契約は当然に解除され,賃貸人は,第三者の立会いのもとに,随意に本件貸室内の遺留品を任意の場所に保管し,又は,任意売却のうえ賃借人の賃貸人に対する債務の弁済に充当しても,賃借人は異議を申し立てない。」

自力救済条項は無効

裁判所はこの特約の効力を否定しました(東京地裁平成15年7月3日判決)
このような特約は、法律の手続を経ないで自力で権利を実現できるという特約で、このような権利実現の仕方を「自力救済」といいます。法治国家である以上、権利の実現は法的手続きで行うべきであって、自力救済は法で禁止されているところです(最高裁昭和40年12月7日決定)。
この特約に基づいて残置物を処分した貸主と管理会社は、後に、賃借人から損害賠償請求され、廃棄された動産の損害100万円と慰謝料100万円の合計200万円の支払いを命じられました。

死亡による当然終了条項

賃借人の死亡によって賃貸借契約が当然に終了するという特約の効力はどうでしょうか。
「賃借人が亡くなったときは賃貸約契約は当然に解除される」というような特約です。

このような特約は無効になります。
高齢者の居住の安定確保に関する法律(平成13年法律第26号)は終身建物賃貸借契約の創設などについて規定した法律です。
終身建物賃貸借契約は、①事業者が都道府県知事の認可を受けた場合に、②公正証書によるなど書面によって契約をするときに限って、賃借人が死亡した時に賃貸借契約が終了すると定めるものです(高齢者居住安定確保法52条)。この要件に当てはまらない場合は、賃借人に不利な契約終了の特約ということになって無効とされるためです(民法30条)。

死後事務委任

それでは次のような解除通知を受け取る権限を第三者に与える特約はどうでしょう。
「賃借人は、連帯保証人に対し、次の行為を行う権限をあらかじめ委任する。
・賃借人が死亡し、賃料の支払が3か月以上滞った場合に、契約解除通知を受領する権限」

これは賃料不払という債務不履行があった場合にそなえて、あらかじめ、契約解除通知を受領する権限を代理人に与えておいて、いざという場合賃貸人から解除通知を連帯保証人に通知して契約を終了させる特約です。いわゆる「死後事務委任」の一種といえます。
別項で説明した「当然解除特約」は賃貸人と賃借人の間の合意によって契約の終了時期を賃借人に「不利に」決めるものであって、借地借家法によって無効とされています。
これに対して解除通知の受領権限を付与する特約は、賃借人が連帯保証人に代理権を付与するという賃借人と連帯保証人の間の合意であるので、この点当然解除特約とは異なります。そして、判例も、委任契約を死亡によって終了させないで存続させることもできるとして死後事務委任契約の有効性を認めています(最高裁平成4年9月22日判決)。
ネットで検索すると、亡くなった後の遺品・残置物の処理を行います、という死後事務委任契約の紹介もいくつも見られるようです。

死後事務委任契約のリスク

このようなことからこの特約は有効であるようにも考えられますが、リスクはあります。
死後の委任といっても内容は様々です。葬儀・入院関係費の支払といった避けて通れないように思われるものや、残置された無価値物の処分といった経済的損害のないものもあります。一方で、価値のある財産の処分にかかわる委任内容もありうるでしょう。相続人のあるなしも実際問題としては関係してきます。死亡によって相続人が賃借権を相続するので相続権との衝突の問題もあります(財産は相続する一方死後事務委任契約も相続しますので、委任契約は相続人との間でも有効とも考えられますが、その死後事務委任契約の存在自体を相続人が知らない場合などでもはたして有効かという疑問もあります)。
死後事務委任契約は有効であるとしても、特に遺品などの財産の処分については後に効力が覆される危険性を考慮して慎重に対応するのがよいと思います。

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